あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


30 まちがゆたかになった

やがて、やまのしゃめんに
あるオリーボロスののうじょうに
はるがやってきました。
ルイさんはしろくてまあるい、
かわいらしいおはなをつけた
オリーボロスのきぎをかんさつしながら、
ふかくためいきをつきました。
「いつも今ごろまではじゅんちょうなんだが…」

「ルイさん」といったのは、うさぎさんでした。
うさぎさんはまっしろな足をとんとんとしながら
「たぶん、きょうくらいには
ノナフーのたねがくるよ」
とにこにこがおでそうつげます。

とそのときでした。
みなみのおそらのむこうから、
わたりどりのかぞくのすがたが
ゆっくりとちかづいてくるのがみえました。
「ルイさん、みてあれを」
とことりさんもたっぷりのえがおをうかべて
ルイさんにつげます。

ルイさんがそのようすをみていると、
わたりどりたちが、
なにかをいれたふくろをさげて
こちらにむかってきているのがわかりました。
そうしてルイさんのそばまでくると、
そのふくろをそっとじめんにおいて、
ふたたびおそらへととびたっていったのです。
ルイさんはそのなかみをみるなり、
たいそうおどろきの
おかおになりましたが、
すぐにうれしさでいっぱいの
ひょうじょうになりました。
そこにはずかんでなんどもみた、
あのノナフーのたねが
いっぱいはいっていたからです。

ルイさんはさっそく、
じょしゅといっしょにノナフーを
かけあわせたオリーボロスをつくりだしました。
それはやせたとちでもぐんぐんそだち、
きまぐれなうみかぜにもつよくて、
たくさんのあぶらをふくんだ
みごとに実になったのでした。
「すごいわ、ルイさん!」
女の子はほんとうにほこらしく、
そしてうれしそうなかおをしていいました。
ことりさんとうさぎさんとエシカルンも、
そのようすをみて、
くるくるとダンスをはじめました。そのとしから、
やまのしゃめんののうじょうは、
たいそうりっぱなオリーボロスの
はたけにうまれかわりました。
そのうえ、ほかのオリーボロスより
たいそういいかおりがするとひょうばんになり、
ずいぶんとおくからてにいれようと
やってくるひともいたし、
まちのなかにはオリーボロスのあぶらを
ひくこうじょうもできて、
えがおがあふれるまちになったということです。

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