「ねぇ、泣かないで」
エシカルンは、おとこのこの手を
ぎゅんとにぎりました。
どこもここもまるできずだらけの、
そのちいさな手は、
きれいなお花をつんだことも、
たのしい本のページをめくったこともないのでしょう。
そうおもうと、
ことりさんもうさぎさんも、エシカルンも、
おとこのこがふびんで、
しばらくものをいえませんでした。
「わたしたちがちからになるよ」
いっときあと、ことりさんがようやくそう口にし、
なつのはねがととのったばかりのみぎてをのばして、
おとこのこのほっぺの涙をぬぐってあげました。
「おてんとうさまがあるうちに、おうちにかえろう」
うさぎさんが、すいとうの水をくんでさしだすと、
おとこのこは、さばくのらくだのように
その水をのみほしました。
そしておそるおそるいいました。
「こんなところを親方にみつかったら、
おしおきになってしまうよ」
エシカルンは、このおとこのこを
ほうっておけないと思いました。
森のそとではじめてであったにんげんのおとこのこが、
こんなにひどいめにあっているんだ。
「おとこのことともだちになって、
がっこうへ行かせてあげよう。
おとこのこのおかあさんに
とろりとしたミルクをのませてやろう。
そのためにはね…」