あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


12 るりいろ石と、たった1まいの銀貨

おとこのこは、しばらく3にんのすがたを
だまってみておりましたが、
やがてかぼそい声をだしました。

「るりいろ石をほっているんだ」

るりいろ石というのは、にんげんが大好きな
たいそううつくしい、ほうせきになる石。
エシカルンはいつか、森のなかまから
そうきいたことをおもいだしました。

「じゃあ、きみはおかねもちのこどもなんだねえ」
エシカルンがたずねると、おとこのこは、
なおもかおをまっかにして、ようやくこたえます。

「……そんなわけはないよ。
ぼくはただ、るりいろ石をほって、
それを親方にわたすだけなんだ」

おとこのこのしゃべりは、もうずいぶんながいこと、
だれともおはなしをしていないというふうな、
とつとつとした、おぼつかないことばのならびでした。

「でも、どんなにたくさんるりいろ石をわたしても、
ここで1にちじゅうほりつづけても、
親方はいつも、
1まいぽっちの銀貨をくれるだけなんだ。
ぼく、ほんとは、からだがよわいおかあさんに、
とろりとしたミルクや、きつねいろにやいたパンや、
おいしいあじがするたまごをたべさせてやりたいけど、
1まいの銀貨じゃあ、かたいパンがはんぶん、
やっとこさ買えるぐらいにしかならないんだ」
おとこのこの目には、いつしか、
いっぱいのなみだがたまっていました。

 

 

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