おとこのこは、しばらく3にんのすがたを
だまってみておりましたが、
やがてかぼそい声をだしました。
「るりいろ石をほっているんだ」
るりいろ石というのは、にんげんが大好きな
たいそううつくしい、ほうせきになる石。
エシカルンはいつか、森のなかまから
そうきいたことをおもいだしました。
「じゃあ、きみはおかねもちのこどもなんだねえ」
エシカルンがたずねると、おとこのこは、
なおもかおをまっかにして、ようやくこたえます。
「……そんなわけはないよ。
ぼくはただ、るりいろ石をほって、
それを親方にわたすだけなんだ」
おとこのこのしゃべりは、もうずいぶんながいこと、
だれともおはなしをしていないというふうな、
とつとつとした、おぼつかないことばのならびでした。
「でも、どんなにたくさんるりいろ石をわたしても、
ここで1にちじゅうほりつづけても、
親方はいつも、
1まいぽっちの銀貨をくれるだけなんだ。
ぼく、ほんとは、からだがよわいおかあさんに、
とろりとしたミルクや、きつねいろにやいたパンや、
おいしいあじがするたまごをたべさせてやりたいけど、
1まいの銀貨じゃあ、かたいパンがはんぶん、
やっとこさ買えるぐらいにしかならないんだ」
おとこのこの目には、いつしか、
いっぱいのなみだがたまっていました。