あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


14 ぶどう酒が、ただの水になった

にんげんのこどもにろうどうをさせながら、
親方はそのころ、じぶんのへやで、
びあだるのようなおなかをさすりながら
ぶどう酒をしこたまのんでいました。
テーブルのうえには、
るりいろ石がたんまりはいったいれもの。
そばには、
金貨をどっさりかくしたきんこがあります。

「やあ、これだけのるりいろ石があれば、
おれはいっしょう、
おいしいぶどう酒をのんでいられるな」

そういいながら、
ふたたびぶどう酒をひとくちのんだ親方…。
「なんだこれは!このまずいのみものは!」
とつぜん、まっかになってさけびました。
どうしたことか、
ぶどう酒がただのあかいろの水になっていたのです。

にぎっていたびんをいきおいよくなげつけた親方は、
そばにあったるりいろ石のるりいろが、
ひとつのこらず、うすぎたない石ころに
かわりはてていることにもきがつきました。

「ちくしょうめ、だれがこんないたずらを!」
親方はだいどころにいき、
あたらしいぶどう酒をあけましたが、
やっぱりそれも、
あじのしないただの水にちがいありません。
すでによっぱらっていた親方は、
きゅうにねむけがやってきて、
そのばでぐうぐうねむってしまいました。

そういえば、
ぶどう酒をのみはじめてしばらくしたころ、
親方は、どこかとおくで、
きみょうなこえをきいたきがします。

えしかるるるん、えしかるんるん
えしかるるるん、えしかるんるん

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