あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


15 こどものころの親方

ねむってしまった親方はいつしか、
こどものころのゆめをみていました。

おばあさんとふたりですんでいた
そまつないえには、
すっとんとんのおへやがひとつ。
欠けたおわんがのったちゃぶだいがひとつ。

そこにとつぜん、たよりないひき戸があいて、
はいってきたひとりのこども。
それは、おさないころのじぶんだと、
親方はゆめのなかできがつきました。

こどもが、おばあさんのねどこで
ただいまとこえをかけると、
「ぼうや、またるりいろ石さがしかい。
たいへんだったね」

おばあさんもこどもにほほえみかけました。

「おばあさん、ごめんね。
きょうもかたいパンしかかえなくて」
こどもがいうと、おばあさんはささやくように
「いいんだよ」とうなずきました。
そうしておもむろに、こうつづけます。

「どうやら、ぼうやとおわかれるするときが
きたかもしれないねぇ」

「え?」

こどもは、おわかれということばを
しゅんかんにはりかいできずに、
おばあさんのかおをじっとみつめるばかりでした。

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