あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


16 おかねをかせぐことだけを考えて…

おばあさんは、ほしがかがやくそのひのばんに、
めされました。
こどもはかおをぐしゃぐしゃにしながら、
こえをだしてなきました。
「あまいミルクとたまごを
おばあさんにたべさしてやれていたら…」
なんどもなんども、なきながらそういいました。
「ぼくにおかねがないばかりに、
おばあさんがしんでしまったんだ!
おばあさん、おばあさん」
しばらくのあいだ、なきつづけて、
なきつづけた、こども。

こどもはやがて、なみだをふいてたちあがると、
りょうてでこぶしをにぎり、
ちからをこめながらいいました。
「おばあさん、ぼくはかならず
おかねもちになってみせるからね」
ぼろぼろのカバンにみのまわりのものをまとめ、
こどもはひとり、まちへとむかったのでした。

しばらくして、めをさました親方は、
じぶんのかおがゆめにみた、
こどものころのじぶんとおなじように、
なみだでぐしゃぐしゃに
なっていることに気がつきました。
親方は、おもいだしていました。
はたらいてもはたらいても、銀貨しかもらえずに、
びょうきのおばあさんに、じようのあるものを
たべさせてあげられなかった
こどものころのことを。

「あのときから、おれは
おかねをかせぐことだけをかんがえて、
ひっしになってはたらいてきた。けれども…」

親方はすっくとたちあがると、
おおきなふくろのなかに
たべものや金貨をいっぱいにつめ、
そとへとかけだしていきました。

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