どどどっ、どどどどっ。
お頭や漁師たちがのったぎょせんは、
おれがうみのたいしょうだといわんばかりに、
いばった音をひびかせ、沖へとでてゆきました。
そのようすをみていたしょうねんが、
くやしさをにじませます。
「やつらはきまりをやぶってかせいだお金で、
あんなにりっぱなぎょせんにのっているんだ。
そしてうんどうじょうほどもある網をつかって、
ごっそりのこらず
さかなをさらってしまうんだよ」
しょうねんはうなだれながらも、
もうがまんがなりません。
すると、こんどはちちおやが
ぼんやりとつぶやきました。
「あいつもお頭とよばれるようになるまえは、
せっせとはたらくいい漁師だったんだが…」
ちちおやのそんなつぶやきを
きいていたエシカルンたち。
「それだのになぜ、
あくどいお頭になってしまったの?」
すぐさま、といをしたことりさんに、
ちちおやはこたえました。
「やつのいえはきょうだいが多くて
まずしかったんだ。
それで、やつがいちばんかわいがっていた
すえのいもうとが
まちに奉公にだされてしまったんだよ」
そのことをさかいにして、
お頭はかわってしまった。
お金さえあればとかんがえるようになったのです。
「じゃあ、お頭はもともと、
わるい人じゃないんだね」
うさぎさんがいうと、
ちちおやはしっかりとうなづきました。