あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


23 おぼれるいもうと、たすけるお頭

お頭ののったぎょせんで、
ふしぎなことがおこったのは、
それからまもなくのことです。

「たすけて!たすけて!」
ぎょせんのてっぺんで、
てしたの漁師たちにしじをしていたお頭は、
うみのどこからか、
たすけをよぶこえをきいたきがしました。
目をこらして、あたりをみまわすお頭。
すると、さけびごえは、
こんどはいよいよはっきりみみにとどきました。
「だれかたすけて!だれか!」
お頭が目にしたのは、なみだつすいめんに
いまにもすいこまれてしまいそうになりながら、
ひっしでもがいているおんなのひとだったのです。

「お、おれのいもうとが!おぼれている!!」
それはいぜん、
まちに奉公にいった
お頭のいもうとではありませんか。
お頭はけっそうをかえ、さらにさけびます。
「おい、だれか、ロープとうきわを!
はやく!いそぐんだ!」
けれども、ぎょせんにはロープもうきわもなく、
漁師たちにもなすすべがありません。

お頭はぎょせんのうえから、
ひっしのぎょうそうで
いもうとにこえをかけつづけました。
「おーい!おーい!だいじょうぶか?おーい!」
けれども、いもうとはもう、ちからがつづかず、
かおがすいめんに見えかくれするぐらいに。

お頭はいてもたってもいられなくなり、
さっぱりおよげないこともわすれ、
うみにとびこんでしまいました。

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