お頭は、りょうてでなみをかきかき、
いもうとに近づこうとします。
けれども、お頭のからだをうみに
しずめてやろうと悪だくみをするなみにおそわれ、
いもうとのところへちかづくことができません。
いっぽうのいもうとはというと、
そのすがたはもうほとんど、
うみのなかにすいこまれるすんぜんです。
もう、だめかもしれない。
お頭がおもった、そのとき。
うみのなかからきこえてくるこえを、
お頭ははっきりとみみにしました。
えしかるるるん、えしかるんるん
えしかるるるん、えしかるんるん
するとどうでしょう。
うみのなかから、
ぴかぴかとしたひかりのつぶのようなものが、
あっちからもこっちからも
いっせいにあらわれたかとおもうと、
つぶはしだいにおおきな
ひとつのかたまりのようにまとまり、
いもうととお頭のからだをもちあげたのです。
そうしてふたりはそのままぎょせんへとはこばれ、
さしのべた漁師たちのてで、
ふねのうえへとひきあげられました。
お頭といもうとがひきあげられたあとのうみには、
まるいひとかたまりだったちいさなつぶが、
しゅうっとかたちをかえ、
ながれるようにうみのなかへとさっていきました。