あしたのせかいをたびするおはなし ことりとうさぎとエシカルン


32 やさしい、わたゆき

少女たちの目からあふれだしたなみだは、
あおぞらのいろをしたワンピースに、
とつ、とつ、とつと、
あまつぶのようにおちていくのでした。

わたしたちは姉妹なの。
このワンピースは、わたしがこうじょうに
のこっていたふるいぬのをしたてて、
妹がししゅうをしたのよ…。だいじなしごとをうしなって、
とほうにくれているふたり。
そんなふたりに、
いっしょうけんめいことばをさがすエシカルン。

まいおりてくる、わたゆき。

あたたかいふゆの毛にかわった
うさぎさんとことりさんが、
少女たちをかこんでまあるくなると、
ふたりは、おかあさんのもうふにくるまれたように、
あんしんしたひょうじょうをみせるのでした。

やさしいこころをもったわたゆきは、
少女たちに、
焼けこげたたてものをこれいじょう
見せたくはないとおもったのでしょう。
わたゆきは、
おそらのうえからたくさんのなかまをよびこんで、
ずんずんいきおいをまし、
まっくろになったはたおりこうじょうを、
しだいにおおいかくしてしまいました。

だいじょうぶ。きっと、
たくさんのものたちが、たすけてくれるよ。

おそらを見あげながら、
ようやく姉妹にそうこえをかけたエシカルンに、
わたゆきのたいちょうがそっとささやきます。

エシカルン、あしたはクリスマスイブだよ。

どこからかながれてきた、ジングルベルのリズム。
かろやかなすずのね、いのりのメロディー。
かじかんだくうきをとかす、
子どもたちのうたごえ。

サンタさんが、
姉妹のもとにおとずれてくれたら……。

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